ベトナムの新型コロナワクチン関連情報 ベトナムへのワクチン入荷状況と、その運用について(2020年8月7日更新)      

現在生じているCOVID-19第4波の深刻な状況に後押しされる形で、ベトナム政府は2021年末までに人口の70%分に当たる1億5千万本以上のワクチンの確保を目指すことを決定した。またCOVID-19予防と制御のための国家運営委員会(the National Steering Committee for COVID-19 Prevention and Control)の委員長であるĐam副首相は、ベトナムに到着したワクチンの量が少ないのは、国の資金不足によるものではなく、世界的な供給の制約によるものであるとも報告している。

ベトナム国内で利用が可能なワクチン

  • 現時点で保健省は国内接種に利用できるワクチンとして、イギリスのアストラゼネカ/オックスフォード製、ロシアの国立ガマレヤ研究所のSputnik V、中国のシノファーム、アメリカのファイザー製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製、モデルナ製ワクチンの6種類を認可している。
    1. ベトナムのNanogenが開発中の国産ワクチンNanocovaxについても、緊急措置として使用許可が検討されている。
    2. グエン・タン・ロン保健大臣は、ワクチンの調達おいて各国は激しく競争しており、ワクチンの購入が困難な場合、副作用や有効性に課題があるとされるワクチンも調達検討の対象となると発言している。

ベトナム国内にワクチンを供給する仕組み

  • ワクチンの供給が始まった2021年4月当初は、COVAXやVietnam Vaccine JSC (VNVC)のみを通して供給が行われる仕組みであった。
    1. COVAXとは、世界保健機関(WHO)やユニセフなどが主導する国際的な新型コロナウイルスワクチンの調達・供給枠組みで、日本や中国を含む180以上の国・地域が参加している。高・中所得国がワクチンに共同出資・購入して人口の2割分を受け取る一方、低所得の国には無償で提供する。ベトナムでは2022年初頭までにCOVAXを通じて計3,890万回分の供給が計画されている。
    2. Vietnam Vaccine JSC (VNVC)とはCOVID-19ワクチンの輸入に関して保健省によって最初に認可された民間企業であり、ここを通してアストラゼネカのワクチンが入荷してきている。またこれに引き続きホーチミンにあるSapharcoという民間企業もワクチンを輸入することを認可され、ここを通してシノファームワクチンが入荷されている。
  • 上記のVNVCやCOVAXを通してワクチンを供与する仕組みに加え、民間企業が商業ベースでワクチンを提供することができるようになった。
    1. 2021年5月18日に、ファイザーから3100万回分のワクチンを購入すると保健省が発表した。
  • 以上のスキームに加えて政府が1200億円規模の新型コロナワクチン基金を設立した。
    1. 目的:集団免疫を達成するために、すべての人々に無料のワクチンを投与すること。
      • 基金はワクチンの購入、輸入、国内ワクチンの研究、開発、生産のために設立された。
    2. 管理は財務省。
      • 1200億円の内訳約1000億円が購入代金。
      • 残りが輸送や保管、流通、接種などにかかる費用。
    3. 現状
      • 外国企業を含む企業団体の従業員に対するワクチンの優先投与について
        この基金の設立当初は、企業がワクチン基金に寄付するからといって、リスクの高い人々よりも早くワクチンを接種することはできないとしていた。しかし、7月28日にファムミンチン首相が、保健省にCovidワクチン基金の貢献者はワクチンの優先順位を得ることができるようにすることを求めた。
  • 2021年6月2日、保健省は第4波の流行が急速に拡大に対する、ワクチンの供給不足を受け、ワクチン調達に当たって適切なコネクションを持つ機関・組織・個人に対して協力を呼び掛けた。保健省は、企業各社のワクチンの輸入・保管手続きについて出来る限りの支援をするとしている。
    1. それに伴いワクチン輸入・保管のライセンスを持つ企業36社のリストを発表した。
    2. 輸入の対象となるワクチン
      1. 世界保健機関(WHO)によって緊急使用が承認されているワクチン(アストラゼネカ、ファイザー、モデルナ、シノファーム、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど)について、輸入に向けた合法的且つ十分な書類を受け取った後、保健省が5営業日以内に承認する。
      2. WHOから緊急使用の承認を受けていないワクチンについても検討する。

ベトナムでのワクチンの運用状況について

  • 8月16日のTuoi Tre Newsの記事によると、感染症の予防と管理に関する法律は、管轄当局が特に流行地域において、予防接種を必要とする人々に予防接種を強制する権利を有することを規定しているとある。
  • ベトナムに入荷するワクチンの絶対数が少ないため、保健省は異なるワクチンを組み合わせて使用することを認め、ガイダンスを発表した。
    1. 同じ種類のワクチンを2回(製剤ごとに定められた規定回数)接種するのが原則。
    2. ただしワクチンの供給が限られている場合、接種者が同意すれば、1回目にアストラゼネカ、8~12週間後の2回目にファイザー製のワクチンを接種することが可能。モデルナなど他のメーカーのワクチンを接種してはならない。
      • ファイザー、モデルナ、シノファームワクチンで始めた場合、2回とも同じ種類のワクチンを接種することとし、1回目と2回目の接種間隔はメーカーの規定に従う。
      • ワクチンを組み合わせて接種することに関しては、他国(イギリスやドイツ、カナダなど)でも研究が進んでおり有望とする結果も報告されてきてはいるが、まだWHOや日本では認められていない。現在イギリスでは国として大規模臨床研究を進めている。
  • 2021年の最後の四半期に、ファイザーから12~18歳の若年ベトナム人に対して2000万本のワクチンが提供される予定。米国や日本ではすでにこの世代に対してのファイザーワクチンの使用が認められている。
  • 中国から輸入されたシノファーム製ワクチンについては、当初はベトナムに居住する中国人や、中国での就労や留学を予定しているベトナム人、中国との国境付近に暮らすベトナム人のみが接種対象となっていた。しかしながらハイフォン市に対するワクチンの割り当てが足らなかったために、それを補充するために輸入された100万本のシノファームのうち、50万本が8月5日にハイフォン市に供与された。