ベトナムのCOVID-19のノート 2020.12.13 感染者1395例

12/13 7am時点でのベトナムの感染者 

ベトナム全体1395例(回復1238、死亡35、致死率2.5%)

時系列でまとめ

  • 第一波(2020/1/23以降)は健康な外国帰りのベトナム人、もしくは海外からの渡航者が中心だったこともあり、死者0。4/23以降、ベトナム国内のコミュニティには新規のコロナウィルス感染者の発生はなかったが、7/25に患者416が発生したことにより、連続無発生期間99日間で終了となる
  • 第二波(2020/7/25以降)では高齢者や合併症がある人が多く感染し、35人が亡くなった。第二波の原因として、感染した不法入国者からの感染拡大が疑われている。
    • Phuc首相の方針『経済も感染制御も両立させる( “with the resolve to achieve the dual goals of controlling the epidemic while maintaining economic growth.”)
    • 第一波の時に比べて、より小さなゾーンに限定した隔離またはロックダウンをすることにより、経済やビジネスの損害を最小限に抑える方針に変わる。
    • 参考ベトナムのCOVID-19のノート 2020.10.02 
  • 第三波(仮)(2020/11/30以降 国内感染4名発生)
    患者No.1342(ベトナム航空のスチュワード)は、ホーチミン市内のベトナム航空が管理する施設で隔離されている最中に、ルーマニア帰りの患者No.1325から感染した。患者No.1342が自宅隔離をしている最中に感染した患者No.1347(英語教師)に感染させ、そこからからさらに2人の方(患者No,1348と1349)へのコロナウィルス感染が確認された。12/2以降、新たな市中感染の広がりは認められていない。感染を封じ込める目的で、2200人を超えるF1、F2の方に対する感染の有無の確認、学校の閉鎖、感染が確認された地域の封鎖などの対策が行われる。今回の第3波(仮)は第二波と比較すると、感染源(F0:ルーマニア帰りの患者No.1325)が特定されていること、患者No.1342の行動履歴からアクティブな若年層に流行が広がる可能性が高いこと、などの違いがある。

ベトナムの新型コロナウィルス対策の主な方針

  1. 海外からの入国制限、入国者の隔離、濃厚接触者・感染者の徹底的な追跡/隔離。
    2020/11/30に起こった国内感染の発生をうけ、入国者全ての14日間強制施設隔離と、商業便のストップを決定。
  2. 感染拡大を抑えるために医療専門家・警察・軍隊の動員。国民にも明確に協力を要請(罰則あり)。
    Poste. ダナンからホーチミン入域の3000人、コロナ検査せず 刑事責任も
    VIETEXPERT. マスク着用せずに200万ドン
    Poste.コロナ第2波震源地のダナン、4日で臨時病院を完成
  3. 広報・啓蒙にITを活用。
    Poste. ベトナム:副首相がコロナ接触確認アプリ利用など呼びかけ
  4. 国民に対しての明確な情報提供、フェイクニュースの徹底的な排除。
    ジェトロ・アジア研究所. ベトナムの新型コロナウィルスと情報宣伝工作.
    Tuoi Tre news.Two women fined for spreading COVID-19 fake news in Vietnam.
     勘違いで、情報の真偽をたしかめずに間違った情報をFbに載せたため、500万ドン(ベトナムの大卒の給料の半分ぐらい)の罰金を課された。
  5. 保健省は『ウィルスはコミュニティに入り込んでいる』という認識のもと、国民に対してウィルスと闘いながら経済を発展させるために、『コロナウィルスの国内流行下で生活する方法』を学ばねばならないとした。具体的には『公共の場ではマスクをする』、『お互いに距離を取る』、『集会を避ける』、『消毒を行う』、『手を清潔にする(手指衛生)』、『健康宣言を行う』ことを推奨した(5つのK)。

経過の中で明らかになってきた問題・知見

事例/過去のパンデミックからのエビデンス

  1. 隔離に伴うメンタルヘルス問題
    国によりますが、海外に渡航してきた日本人ビジネスマンは、入国後しばらく隔離という国は少なくないと思われます。私がいるベトナムは、入国後必ず2週間隔離です。
    ベトナムでは隔離中に自殺する例もあります(VIETJO. 日本帰りの男性が隔離施設で飛び降り自殺、うつ病が原因か)。そこまでいかなくとも様々な心理反応が見られます。海外で働く身としては、現地で精神症状が発症すると、対応が非常に難しく、帰国となることも多いので、是非発症する前に対応が必要と考えています。つまり日本を出発する前から、様々なフォローアップの準備をしておく必要があるということです。事後対応では限界があるでしょう。
  2. VNEXPRESS. Covid-19 isolation sends 71 to Hanoi mental hospital
    ハノイの精神病院に送られた71名は主に以下のグループに分けられる。・不眠やMaunder(抑圧状態・倦怠感かな?)を呈する群。・もともと精神疾患があったが、治療後海外で働いたり、留学したりする程度には回復していたが、ベトナムへの退避の際の入国時の隔離で、適切な治療が提供されず、精神疾患が再発した群
  3. 検疫/隔離中のメンタルヘルスに関する症状、対応方法などのエビデンス:The psychological impact of quarantine and how to reduce it: rapid review of the evidence. The Lancet. 

メンタル問題対策として使えそうなもの

  1. 対応方法の一例、海外のことでも対応して下さるそうです。:新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談(厚生労働省)
  2. その他参考になる情報源:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

経済

  1. ちなみに経済に関しては、こんな状況下でもしっかりとGDPを成長させています。
    NNAアジア. 3QのGDP成長率、2.62%で前期から加速. 記事中で『1~9月のGDP成長率は前年同期比で2.12%だった。』とあります。
    VIETJO. ベトナムのGDP、東南アジアで唯一成長維持と予想 S&P.

    ※ベトナム政府の英語サイトよりInfographic: Review of Gov’t response to COVID-19 pandemic

対策・ホットスポットなどの情報

ベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表
領事館からの情報参照

職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第 4 版(修正済) 作成:一般社団法人 日本渡航医学会/公益社団法人 日本産業衛生学会

日本からの入国に関連する情報

  1. 在ベトナム日本国大使館. ベトナムへの入国を希望する皆さまへ. 参照(細かく改定されています)。
    現在観光客を受け入れない。
  2. 日本の外務省. 国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について.
    • 新規のビザ発行には制限がかかっていいるため、日本国籍のパスポートを持っていても、ビザ免除優遇措置はされない。⇒つまりベトナムのビザを持っていない人は、ビザ取得の手続きが必要で、これがまた煩雑。プロの介入が必要。
    • 隔離措置を免除するためには、国際的な保険に加入するか、専門家らを招聘した会社が保証人になる必要があり、招聘された者がベトナムで新型コロナウイルスに感染した場合、全ての医療費やその他の費用を負担しなければならないという。 
  3. 以下どのような医療費がかかり、どのような保険が必要かについて。
    • 政府は全ての専門家に対して、国際的な医療保険を持っていることを要求しています。
      • ベトナムで外国人がコロナウィルの治療を受けた場合、ベトナムの政府からの補助はないので(ベトナム人はある)、旅行者保険は必須。
      • The National Hospital for Tropical Diseases No 2 での外国人コロナウィル患者の治療費は、平均850〜1900ドル。重症例の場合には20000ドル以上かかったケースもある。最重症のイギリス人パイロット、患者91は最低でも151,000ドル以上。
      • タイでも1000万以上補償する保険に入ってから入国するように政府が指導している。
      • 最近日系企業でも、経済的ダメージ回避のためか、医療保険を不十分で安いものに切り替える動きが見えます。社員をわざわざ海外に送り出す以上は、しっかりと健康のことも考えてあげてほしいものです。
  4. 滞在中に発熱、咳、喉の痛み、息切れなどの新型コロナウイルスが疑われる症状が出た場合は招待した会社または医療当局などに報告しなければならないという。
  5. 専門家や公務目的でベトナムに入国する者と接触する人に関しては、隔離対象とはならないものの、最後に接触をした日から14日間は自身で健康観察を行う必要があるという。⇒不要不急のあいさつ回り、夜の接待、外食とかは極力控える流れ?
  6. レジデントトラックとビジネストラックの説明には、「対象者は、本邦帰国前14日間の検温を実施してください。発熱(37.5度以上)や呼吸器症状、倦怠感等を含む新型コロナウイルス感染症の症状が認められる場合は帰国を中止してください。健康モニタリングの結果の事前提出は不要です。帰国の際に機内で配布される「質問票」に健康状況として反映してください。」と書いてあり衝撃的です。

日本への再入国について

在ホーチミン日本国総領事館. 再入国許可(みなし含む)保持者に対する入国許可について(国際的な人の往来再開に向けた段階的措置).


日越間の往来に伴う感染者やその他の問題の発生

今後の対策・スタディ

  1. 国内の感染を根絶
    1. ランダムテスト
    2. 治療方針に関して:COVID-19から回復後の患者であっても、退院後30日間は監察下に置かれれます。これまでは退院適格になった後に14日間の自宅隔離でしたが、新しい方針では退院適格になった後にさらに14日間地域の医療機関もしくは、患者自身で用意した隔離場所で過ごします。その後さらに退院後30日までは外出制限やSocial Distancingなどの医療監視が行われる方針となりました。
    3. 感染者追跡アプリBluezonの導入:アプリユーザーのウイルス感染が分かった場合に、濃厚接触した可能性のあるアプリユーザーに警告通知を送る機能を有する。
  2. PCR検査:ベトナム製であるがWHOの認可あり
  3. BCGのスタディ
    新規発生が出てこないため、症例が集まらず中止。
  4. ベトナム国内生産の人工呼吸器( 気管切開下陽圧換気(TPPV)向け )の人工呼吸器の出荷が始まる(気切でいくのか?)
  5. ワクチン
  6. ベトナム国立衛生疫学研究所と日本の長崎大学の15人の研究者が、SARS-CoV-2の迅速診断キット(ELIZA法、精度約95%)を開発し、大量生産の認可を得た。
  7. ベトナムで開発されている新型コロナウイルス抗原迅速検査キット(クイックテスト)

世界からの評価

Forbesの記事(20200520):新型コロナ対策をめぐり,ベトナム国民は政府と報道機関を最も高く信頼
世界銀行の記事(20200430):Containing the coronavirus (COVID-19): Lessons from Vietnam.
World Economic Forumの記事(20200330):Viet Nam shows how you can contain COVID-19 with limited resources.
BROOKINGSの記事(20200520):Reopening Vietnam: How the country’s improving governance helped it weather the COVID-19 pandemic.

POLITICO. Ranking the global impact of the coronavirus pandemic, country by country.: 【新型コロナ対策効果ランキング、死者ゼロのベトナムが世界一】

  • 米国の政治専門誌ポリティコ発表
  • 調査対象の30か国・地域中でナンバーワンの評価を受けた(全世界調査ではない)。
  • 感染者数や死亡者数、失業率、国内総生産(GDP)などの指標に基づき、コミュニティの健康保護と経済振興の面における新型コロナ対策の効果を評価

WHO applauds VN’s quick response to community transmission:2020年7月25日にダナンで市中感染が見つかった際に、ベトナム政府の取った対応が非常に迅速であると評価した。

Poste. ベトナムのコロナ第2波への対応、海外専門家らが高評価

その他

これまでに公開したベトナムのコロナウィルスに関するインタビュー、セミナー資料、動画などをこちらにまとめました。