ベトナムの新型コロナワクチン関連情報 ベトナムでのワクチン開発と、ワクチン外交(2021年8月7日更新)
ベトナムにおけるCOVID-19の研究
2020年2月7日にNIHE(National Institute of Hygiene and Epidemiology in Hanoi)から実験室内においてSARS-CoV-2の分離・培養の成功の報告が出された。
- ベトナムは4番目に早く分離に成功した国であった。
- これにより迅速診断キットの開発が可能になった。
- また自国でのワクチン開発が可能になった。
ベトナム製ワクチンについて
東南アジアの中所得国の中で、ベトナムは最初にワクチンの開発を始め、なおかつ臨床試験を開始した国である。ワクチンの自国生産を目指す理由としては、
- なにより自国民の健康を守るために効果的
- 上記に加えて、地政学的地位の向上にも役立つ。
- ワクチンを開発し、開発途上国にワクチンを提供できるようになれば、ベトナムの地位が向上することが期待できる。
- 先進国(英国やアメリカなど)の製薬会社がワクチン製造技術の情報提供を行わないのならば、その間にベトナムから安価で安全性の高い、なおかつ政治的に中立なワクチンを提供できればベトナムの地位が向上することが期待できる。
などがある。
ベトナムで開発中のワクチン
Nanogen、Vabiotech、Polyvac、The Institute of Vaccines and Medical Biologicals (IVAC)の4つの会社/機関で開発が進んでいる。その中で特に開発が進んでおり、ヒトでの臨床試験段階まで進んでいるものとして、
- NanogenのNanocovax vaccine
Vu Duc Dam副首相も接種しており(2021年2月26日と3月26日)、ベトナム保健省一押し。英国の変異株に対する効果もあるとのこと。このワクチンはWHOが認めるワクチンの候補としてWHOのデータベースに掲載されている。第2相臨床試験までは終了し、6月から13000人を対象とした第3相臨床試験(Phase Ⅲ)が開始された。そしてCOVID-19第4波に伴う危機的状況に後押しされる形で、8月15~20日の間に緊急承認のために登録される予定。このワクチンの研究に関する詳しい情報はこちら。ワクチンの性能に関しては、こちらに詳しく書かれている。 - The Institute of Vaccines and Medical Biologicals (IVAC)のCOVIVAX
2021年3月15日に臨床試験が開始された。第1フェーズは5月15日に終了し、6月から第2フェーズに入っている。そして9月には第3フェーズに移行する予定。このワクチンは一本当たり2.6USDと安価で、輸送や保管が簡単であることが特徴。
また既にワクチンを生産している海外の企業から、ベトナムにワクチン生産技術を移転する動きも出てきている。
- 2021年4月に、ベトナムのワクチン管理システムはWHOから4段階評価中で上から2番目の3級レベルに達したと認定された。
- 3級レベルとは、ベトナムが安定かつ効率的なワクチン管理システムを構築しているということを意味している。
- これを受けてベトナム保健省はWHOと、ファイザーやモデルナ製の新型コロナウイルスのワクチンで使用されたmRNA技術の移転について協議を始めた。またジョンソンアンドジョンソン社とも技術移転について協議を開始している。
- またこれらの動きに応じるように、ビングループはこのほどワクチン生産を手掛ける子会社のビンバイオケア(Vinbiocare)を設立した。この背景にはCOVID-19第4波の拡大に危機感を覚えた政府が、海外のパートナーに対し、国内でのワクチン生産事業に有利な条件を整えるようにしたことがあると考えられる。
- さらにベトナムのワクチン会社 のVabiotech は、ロシアのGamaleya国立疫学微生物学センターからスプートニクVワクチンの生産技術をベトナムに移転し、2021年7月21日に初めてこのワクチンをラインオフした。そして品質検査のためにロシアの国立ガマレヤ研究所に送られた。
ベトナムのワクチン外交
なぜワクチン外交が起こるのか?
様々な原因があるが、例として・・・・
- ワクチンの製造が可能な製薬会社は、製造技術を他の企業に提供することに積極的ではない。
- ベトナムを含めた多くの発展途上国は十分な量のワクチンを購入する金銭的余裕がない。
- ワクチンのかなりの部分は1部の先進国のみで偏って流通している状況が生じている。
- ベトナムを含めた多くの国において、ワクチンの提供元を1つに絞ることに慎重になっている。
- 特にベトナムは多くの国や企業と同時並行的に交渉を行っており、特定国に依存しない工夫としての全方位外交を行っているとの評価もある(参照:JETRO. コラム. 第4波のベトナム、ワクチン外交をめぐる攻防. 新型コロナ禍の現状を駐在員視点で読み解く.)。