ベトナムと日本での新型コロナウィルス対応の違い

新型コロナウィルスで亡くなる方が時間を追うごとにどんどん増え、状況が次々と変わって行きます。TVやスマホからは玉石混交様々な情報が流れ込んできます。この現象にインフォデミック( 科学的根拠のない情報が大量に拡散されている状態 ) という名前が付けられました。
これに加えて2020年3月2日現在、日本とベトナムではCOVID-19の流行状況が大きく違います。結果としてそれぞれの国の対応も違います
そこで自分の勉強を兼ねて、ベトナムと日本の情報を整理し、比較しててみました。

ベトナムと日本の現状の違い

  1. 日本の状況:厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症について. 参照
  2. ベトナムの状況:ベトナムの新型コロナウィルスについて.参照(手前味噌で恐縮です)

COVID-19の流行拡大状況が一目でわかるCoronavirus COVID-19 Global Casesで画像的に見るとより視覚的にわかりやすい。

2020年3月5日 日本331人、ベトナム16人

流行状況が違えば対応方法も異なる(後述)。特に今回の新型コロナウィルスは確実な治療薬やワクチンなどがまだ無いため、

感染しない事、させない事。
感染してしまった場合には重症度に応じて適切に治療(対症療法)を行うこと。

が重要。

これを理解するためにはまずは新型コロナウィルスとはどういう病気なのかを知る必要がある(

COVID-19ってどんな病気? で最低限の情報をまとめてあります、再び手前味噌で恐縮です。

COVID-19がどんな病気なのかを知った上で、ベトナムに住んでいる人が今どのように過ごすべきかを理解する必要があります。
そのために巷にあふれる日本語情報の中から適切に、ベトナムで使える情報を取捨選択していく必要があります。英語情報に関しても同様です。

新型コロナウィルスに感染しないようにするには?

感染経路

  1. 咳やくしゃみなどの飛沫感染と接触感染が主な感染経路
  2. 空気感染は起きていないと考えられている。ただし例外的に、至近距離で相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できない。
  3. また感染源が密閉された(換気不十分な)環境にいた事例において、二次感染者数が特徴的に多いことが明らかになっている。

参考・引用:

  1. 厚生労働省. 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け). 問4 新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか?
  2. 厚生労働省. 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け).問12 集団感染を防ぐためにはどうすればよいでしょうか?


ここからきれいな画像が入手できます!

何はともあれ手洗い・咳エチケット
感染しない、させないために重要。

ここからきれいな画像が入手できます!

マスクによる感染予防は期待できない
人にうつす確率を下げることはできる。

感染者が確認されている国や地域に行かない

  1. 特に韓国、イタリア、イラン、フランス、ドイツ、スペインン、日本など他多数
    参考
  2. 日本国内は既にいろいろな所でCOVID-19が発生しているため、場所が特定できないので、人の集まるところは避ける。
  3. ベトナムなら2020年3月2日時点で発生している地域は特定されている(例:ビンフック省ソンロイ村(2月13日から20日間の隔離予定)3月4日に封鎖解除、新規発生者なし。 )。このため地域として避けるべきところは特にいわれていないが、立食パーティーやカラオケなど、互いの距離が十分に取れない状態のまま,屋内等で一定時間過ごす環境をは可能な限り避ける。

新型コロナウィルス感染が疑われたら?

国ごとに対応が違う
下の図の様に流行状況が国ごとに大きく異なるので、感染しやすさが国ごとに異なる。
また同じ国の中でも場や状況、環境によって違う事もある。

Coronavirus COVID-19 Global Cases. 2020年3月5日より

日本なら(2020年3月3日時点)

  1. 感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しているため、いたるところで感染する可能性がある。
  2. また風邪を引いたときには以下の行動が求められる。
    • 発熱などの風邪の症状があるときは、仕事を休む。
    • 以下の場合は「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせ、受診を勧められた場合に医療機関を受診。
      1. 風邪の症状や37.5°C以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む)
      2. 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。
        ※ 高齢者や基礎疾患等のある人は、上の状態が2日程度続く場合。
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ベトナムなら(2020年3月1日時点)

  1. 発熱,咳,息切れがある場合は旅行,出張を避ける。
  2. 疑わしい症状がある場合は,直ちに診療所を受診し、旅行や出張に行ったことがあれば医療者に伝える。
    • 2020年3月5日時点では、水際対策中である為。
  3. リスクが高い(韓国や中国への渡航歴、COVID発症者との接触歴など、参照: ベトナムの新型コロナウィルスについて. )の場合は専門施設へ紹介。

COVID-19に感染してしまったら

日本なら:すでに国内で人から人に新型コロナウィルスが伝播している。

  1. 軽症例はインフルエンザに準じて外来対応。
    • 現時点で感染者の80%は軽症であることがわかっており、入院を要しない。
    • 現在感染者の数が多すぎるため、医療資源の有効活用して重症者を治療することに重点を置いている。
  2. 重症例に重点を置いて対応(入院治療等)
    • 現時点で感染者の20%は重症であることがわかっており、入院を要する。

以下参照

  1. 前回の記事 COVID-19ってどんな病気?
  2. 厚生労働省. 地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制 )の移行について.
  3. 日本救急医学会.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について (2020年2月26日版).

ベトナムなら :水際対策継続中

  1. ベトナム保健省の指針に従って新型コロナウィルスの 感染流行国への渡航歴や、感染者との接触歴、症状によって隔離するかどうかが決まる。日本と違って症状がなくとも渡航歴、接触歴のみによる隔離もありうる。
    参照:ホーチミン日本国総領事館の出すベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表.
  2. 隔離用の医療施設は既に完成済み。現在すでに隔離に使用されている。

なぜ国が違うと新型コロナウィルス対策が違うのか?

流行状況が違うから‼

日本なら( 2020年3月5日時点 )

  • 水際作戦で、国内に入ってくる感染者を抑制しようとしているが、すでに国内複数地域で 患者クラスター(集団)が把握されている状態になっていることに加えて、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生している
  • ただし大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない。
    参考: 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症について.
  • なので今後感染拡大しないように増加のスピードを可能な限り抑制すること、拡大してしまった時のために重症者対策を中心とした医療提供体制などの必要な体制を整える準備しておくことが大事。

ベトナムであれば ( 2020年3月5日時点 )

  • 現在国内での新型コロナウィルスの新規感染者はいない状態。
    参考: ベトナムの新型コロナウィルスについて.
  • 水際対策を継続。
    1. 引き続き国内で流行を起こさないように、渡航歴や接触歴、症状から疑わしい人は隔離を行う。
    2. 仮に国内で新規患者が発生したとしても隔離が早い段階から行われていれば被害が少なくなる。
  • 水際対策を行いつつ国内での流行に備える
    1. COVID-19を疑われた人や 発症した人を隔離し、専門的に治療するための施設として使用する仮設病院を設立開始(現在完成済み)。
    2. 検査体制の確立

以上のように新型コロナウイルスをめぐる状況の違いにより、対策を柔軟に変えて行く必要があります。


Coronavirus COVID-19 Global Cases. 2020年3月3日より

パンデミック(世界的大流行)に備える

  1. 2020年3月3日時点でWHOからのパンデミック(世界的な大流行)宣言は出ていないものの、これからもパンデミックに発展する可能性は十分ある。
  2. また 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の宣言が既に出されており、WHOは法的拘束力をもって、加盟国がエピデミックにどのように対処すべきかについての勧告を発表でき、また財政的、政治的支援を動員できる態勢になっている。
  3. これに従い以下を目標に様々な対策が始まっている。
    • アウトブレイクのピークの発生を遅らせる( Delay outbreak peak )。
    • インフラや医療の働きかけによって発生数のピークを抑える(Decompress peak burden on infrastructure)。
    • そうして全体的な患者数と健康への影響を抑制する(Diminish overall cases and health impacts)。

      参照:CDC. PREPARING FOR A PANDEMIC.

たとえば中国のCOVID-19のアウトブレイクに関していえば、準備が整わないままアウトブレイクを起こした湖北省と、少し後に病気が広がった他の地域とでは致死率が2.9%vs0.4%と大きく違う。

参照: CCDC.The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) — China, 2020.

このように必要な対策を行うことによってアウトカム(今回の場合は致死率)が改善した。
そしてこのような対策の方法は過去の様々な感染症の流行の経験から研究されており、 CDC. PREPARING FOR A PANDEMIC. にも詳しい説明がある。

流行のフェーズごとに介入方法が違ってくることを理解する!

国及び地域(都道府県)における発生段階
今回のCOVID-19の流行は、対策が成功しなければ以下のように進んでいくと考えられている。



JAMSNET東京.新型コロナ地域感染期の診療継続計画づくり. から引用

そしてフェーズに応じた必要な対策は以下のようになっている。

日本渡航医学会. 新型コロナウイルス情報 -企業と個人に求められる対策-. より引用

日本で行われている対策

2020年3月2日の日本はフェーズ3の国内流行早期(国内感染期)
参照:厚生労働省. 国内の状況.

現在の状況

  1. すでに国内で人から人に新型コロナウィルスが伝播している。日本国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生している。
  2. いくつかの地域には小規模の患者クラスター(集団)が把握されている状態であるが大規模な感染拡大はない。

これからの目標

  1. 水際対策を強化して海外からの流入を抑制することと併せて、国内での感染の拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡数を減らすこと。
  2. 今後、国内で患者数が大幅に増えた時に備え、重症者対策を中心とした医療提供体制などの必要な体制を整える準備を行う。
  3. 社会や経済へのインパクトを最小限にとどめる。

具体策

  1. 検査体制の整備。治療法やガイドラインの開発。
  2. 医療提供体制の整備。
    • 軽症者で病院が溢れかえらないようにするために国民の教育。
    • 会社を休みやすいようにする制度を整備。

ベトナムで行われている対策

2020年3月2日の ベトナムのフェーズはフェーズ1-2(海外発生期 – 国内流入期(国内発生早期))
参照: ベトナムの新型コロナウィルスについて.

現在の状況

  1. VIETJO. 米疾病予防管理センター、ベトナムを「市中感染のリスクがある地」から除外
  2. 水際対策により国内への流入を最小限にすることに成功している。
    • 仮に流入してしまったとしても、接触者の追跡し隔離を行うことにより、感染の広がりを抑えることが出来ている。

これからの目標

  1. 水際対策を継続。
    • しかし完全に侵入を防ぐのは難しいため、同時に国内の医療体制の整備を行う。
    • また感染流行国からの渡航者に備える。
  2. 今後、国内で患者数が大幅に増えた時に備え、重症者対策を中心とした医療提供体制などの必要な体制を整える準備を行う。
  3. 社会や経済へのインパクトを最小限にとどめる。

具体策

  1. 感染流行国からの渡航禁止措置。
  2. 隔離施設、検査施設、治療施設の準備。
  3. 休校措置。
  4. 感染拡大防止のための罰則規定の制定。
    1. 労働許可証の剥奪
    2. 罰金刑。

最後に

思いの外長文になってしまいました。ベトナムでの生活のお役に立てば幸いです。

次回は「ベトナムの新型コロナウィルスと、企業の負うべき安全配慮義務」について書く予定です。